エコに鮮度を保つ箱 【SDGs 工業品】

   最近、近くに総合スーパーマーケットが出来た。1Fにはスーパーとホームセンター、2Fにはドラッグストア、100均ショップ、歯科医院、美容院がある。駐車場も広く、生鮮食品の買い出しついでに日用品もほぼすべて買いそろえることができるので非常に利便性が高い。

   スーパーの生鮮食品も非常に趣向を凝らしている。例えば、鮮魚コーナーには、近海の相模湾で捕れたてのウマヅラハギやマダイ、ヒラメなどが市場で売っているのと同じように魚ごと発泡スチロールに入って売られている。魚をさばける人にとってはさぞかし嬉しい食材である。私自身は切り身や干物コーナーでアジやカマス、サケなどを買う。

   それにしても、主に魚の鮮度を保つのに使われる発泡スチロールの箱には昔から興味があった。造形の美しさもあるが、軽いし、なんといっても保冷性能がすごい。

   発泡スチロールは今から70年前の1950年、ドイツの世界最大の化学メーカーであるBASF社によって発明された。その4年後の1954年に日本への輸入が始まり、1959年から国産化されたらしい。その頃はまだ水産物の梱包や出荷には木箱やコルク材が使用されていたが、価格も安く、断熱性能も格段に高い発泡スチロールが人気となり、瞬く間に普及した。軽くて衝撃にも強いことから、生鮮食品の輸送や保管のみならず、家電やOA機器の緩衝材、住宅建材などにも用途を広げた。

   主に私たちの知っている発泡スチロールは、ビーズ法発泡スチロール(EPS)といって、小さな粒状のポリスチレン(PS)原料ビーズを約50倍に発泡させてつくられる。そのため、製品体積の約98%は空気(原料はわずか2%)なので非常に軽い。また成型も容易であるため、さまざまな形に加工され、幅広く用いられている。発泡スチロールと呼ばれる製品の53%はこのEPSである。

   発泡スチロールは上記のほか、発泡ポリスチレンシート(PSP)があり、いわゆる食品トレーである。また、押出発泡ポリスチレンは板状で、住宅の断熱材や床材などに使われている。全体に占める両者の比率はそれぞれ30%、17%だ。日本におけるこれら発泡スチロールの全体の年間使用量は約13万トンである(経済産業省データ、JEPSA資料)。

   発泡スチロールはリサイクルも容易で、協会(JEPSA)によると、現在ではリサイクル率は90%、燃やしてもダイオキシンを発生させず、環境にも優しいとされている。

   発泡スチロールの高い断熱性能はSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」において、省エネによるCO2削減に大きく貢献している。腐りやすい食品の保管や輸送に電気を使用した冷蔵設備を使わなくてもよかったり、住宅の断熱材として使用することでエアコンの消費電力を抑えることができ、省エネルギー効果を発揮する。また、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」においては、その軽さと衝撃に対する緩衝性能により、労働者の作業軽減に役立っている。

   私たちの暮らしに欠かせない発泡スチロールは非常に身近な存在だが、改めてその性能と省エネ効果に感銘を受けた。せっかく、近くのスーパーがとても新鮮な魚を置いてくれているのだから、いつかまるごと買って自分でさばいてみようと思う。

 

パンチョス萩原(Soiコラムライター)

 

発泡スチロール協会(JESPA)

https://www.jepsa.jp/index.html