「すべての健康は、良く噛んで食べることから」というのは本当らしい。
歯というのは、歯根膜(しこんまく)というクッションのような器官に埋まっていて、一回噛むごとに30ミクロンほど沈み込むそうだ。その圧力で歯根膜の中にある血液が毎回3.5ml脳に流れるという。この噛むことによる血液ポンプが脳のさまざまな領域(前頭前野、運動野、感覚野、海馬など)を活性化し、記憶力をアップさせ、運動能力の向上にもつながる。また、物事を論理的に考えるのを助けたり、高齢者の認知症予防や集中力・注意力アップにも大いに効果がある。
良く噛むと、口の中に唾液が多く分泌される。唾液の分泌は消化を助けるほか、味覚、嗅覚、舌ざわりなどの触覚、食べる音の聴覚などが増す。唾液が多くなることで殺菌効果も増し、虫歯になりづらく、口臭予防にもなる。また食事も時間をかけて噛む回数を増やすことで、歯根や顎(あご)を強くすることと、必要以上に食べ過ぎることがなくなるため、ダイエット効果も期待される。
日本人は昔から魚中心の和食を食べてきたので、噛む回数は多かったが、戦後は日常的な食事へと変わり、あまり食事で噛まなくなった。なので、脳を活性化するためにたくさん噛むようにするには、歯に優しいガムを噛むことが良い、と歯科医も進めている。
ガムを噛むと、ストレスが減るという。それは、ストレスがあるときに大きく反応する脳の扁桃体(へんとうたい)が、ガムを噛むとその神経活動が抑えられるため、ストレスを感じにくくなる。
菓子メーカーの「ロッテ」は、もともとチューインガムで創業した会社だが、長年「噛むこと」について研究を重ねてきた。2018年度より「噛むこと」と全身の健康について研究を行う「噛むこと健康研究会」を発足した。この研究会は、歯学のみならず、医学や栄養学、スポーツ学など異分野の研究者が協力して「噛むこと」について多面的に研究する新たな研究プラットフォームである(ロッテ サステナビリティレポートより)。
日本チューインガム協会でも、「噛むこと」の大切さと現代の子供たちがあまり噛まない(噛めない)食生活を送っている実態をデータで紹介している。また、「咀嚼回数ガイド」で、食品ごとに推奨される噛む回数を表に表している(引用:日本チューインガム協会HPより https://chewing-gum.jp/)
とかく歯の健康には気を使いがちであるが、今後は積極的に歯に優しいガムを噛むことで、改めて心と体に良い「たくさん噛む」という習慣を身につけたい。
パンチョス萩原(Soiコラムライター)
参照
日本顎咬合学会(にほんがくこうごうがっかい)
神奈川県歯科医師会
農林水産省 SDGs食品産業
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sdgs/
ロッテ サステナビリティレポート