東名高速や首都高を夜間走る機会が多いが、印象として6~7割が物流トラックではないかと思う。遠くは鹿児島や北海道ナンバーの大型トラック、背中に「〇〇運送」「●●運輸」などの社名が大きく入っているもの、青や赤のイルミネーションが綺麗なものもあり、夜の高速をそれぞれの目的地を目指して走っている。
公益社団法人全日本トラック協会によると、日本国内の貨物総輸送量は、年間約48億トンである(平成28年度)。トラック輸送は、道路が整備されている国々においてドアツードアの利便性とフレキシブルな時間調整ができるメリットを生かして、迅速さが求められる物流ニーズにマッチしている。
コンテナ輸送が主流の船舶や鉄道、または航空機による輸送においても、末端輸送の大半はトラックによる輸送が必要であり、トラックは国内物流において重要かつ中心的な役割となっている。
現代のトラックの原型が発展したのは戦後自動車の製造を禁じていたGHQがトラックに限って製造の許可を出したことにより、いすゞが戦時中に使用していた軍事用トラックを民間用に改良して量産したディーゼルトラックで、その後1964年の東京オリンピックのために全国に高速道路が建設されるようになり、1970年代以降、日本が大量生産、大量消費時代を突入することにより、トラックによる物流は急激に増えることになる。
個人が利用する宅配も、近年のネット通販人気の影響で大きく増加している。国土交通省によると、トラックによる宅配便取扱個数は、42億9063万個(2019年度)で、前年比では3002万個の増加であった。今年は新型コロナの影響で経済活動が停滞したので物流扱い量は減っていると推測するが、個人用宅配の需要はニューノーマルなコロナ禍の生活様式の中で今後も伸びると考えられる。
トラックによる物流が増える中で、大気汚染や交通事故の増加など、自動車社会の問題も表面化し、トラックの排ガス規制も厳しくなった。一層の環境保全の観点から各トラックメーカーが低公害のエンジンの開発や、石油由来のガソリンや軽油の使用を低減するハイブリッドトラック、水素燃料を使用するトラックなども開発中である。
今や15兆円を超える市場規模となった日本のトラック輸送産業は、私たちの日常生活と経済のライフラインとして欠かすことができない存在である。自然災害の際も、トラックが機動力を発揮し、大量の緊急支援物資を輸送し、国民の「ライフライン=命綱」としての役割も担った。
しかしながら、トラック輸送会社の99%が中小企業であり、少子高齢化による若年ドライバー不足が深刻であり、今後日本における物流の行く末に大きく影響する社会問題となっている。トラック運送事業者においても自助努力で生産性の向上や、ドライバーにおける働き方改革の推進など、行政と連携しつつ課題解決に向けたさまざまな取り組みを行なっている。
私たちがいつでもスーパーやデパートで欲しいものが買えるのも、自宅に買ったものが届くのも、トラック輸送業者らの絶え間ない努力の賜物であると言っても良いだろう。そんな思いを込めて届けられた生鮮食品、日用品などを私たちも大切に消費していきたい。
パンチョス萩原(Soiコラムライター)
参照・引用
公益社団法人 全日本トラック協会 日本のトラック
輸送産業 現状と課題 2018
https://www.jta.or.jp/coho/yuso_genjyo/yuso_genjo2018.pdf
国土交通省 物流を取り巻く現状について 2018