ゼロ・ハンガーに向けて 【SDGs 飢餓をなくそう】

   今日10月16日は、国連の定めた記念日「世界食糧デー」である。

   日本は世界でも有数の食糧輸入国である。農林水産省の品目別貿易実績や日本の食糧事情に関する資料を見ると、豚肉、牛肉、鶏肉、とうもろこし、大豆、海産物などの普段食卓で食しているほとんどの食品を、アメリカ、オーストラリア、中国、東南アジア、南米、アフリカ諸国などの国々からの輸入に依存している。裏を返せば日本の食品自給率は38%と、先進国の中では一番低い。

   蕎麦屋で天ぷらそばを食べる人は多いが、この日本を代表する和食である天ぷらそば一杯のうち、純日本製の食品は22%程度であることを知る人は少ないであろう。いまやエビはベトナム産、小麦粉は中国産がほとんどである。いまや私たち日本人の和食も、実に世界における食糧事情と密接な関わりを持っているのである。

   私たちの食卓に並ぶ食品は、世界の国々から遠路はるばる運ばれている。生産や加工、物流に携わる数えきれない人々の営みや、食に供される動植物の命に至るまで、「世界食糧デー」の今日、改めて食に対する感謝と、世界の食糧事情の現状に思いを馳せる意義は深い。

   「世界食糧デー」は、誰一人も取り残されることなく、人類に平等に与えられている最も重要かつ基本的人権のひとつの「食料への権利」を実現するという目標のために定められた。SDGsで言えば、目標2の「ゼロ・ハンガー(飢餓をなくそう)」である。2030年までに、すべての人々が安全で栄養価が高く十分な食料を確実に入手できるようにすること、そしてあらゆる形態の栄養失調を根絶することに国連加盟国が課題解決に向けた取り組みをしている。

   国連食糧農業機関(FAO)の2020年最新データによれば、世界の穀物生産量は毎年26億トン以上であり、世界中すべての人が十分に食べられるだけの食料は生産・備蓄されていると報告されている。にもかかわらず、現在、世界では約6億9000万人、11人に1人が慢性的な栄養不足に陥り、世界人口の8.9 %が飢餓状態にある。さらにこの数字をアフリカ諸国だけで見た場合、実に5人に1人という非常に深刻な数字に変わる。

   飢餓を地域別に見ると、人数ではアジアが3億8100万人で断トツに高い。アフリカでも人口に飢餓状態にある人々の占める割合が19.1%と深刻だ。また、飢餓までには至らないにしても、安全で栄養価の高い十分な食料を定期的に摂取することができずに深刻または中程度の食料不安の中にいる人々は全世界に20億人ほどいる。こちらは全世界の総人口で見ると3~4人に1人という数字となる。ちなみに「飢餓」の定義は、「長期間にわたり十分に食べられず、栄養不足となり、生存と社会的な生活が困難になっている状態」であり、「栄養不足」の定義は、「十分な食料、すなわち、健康的で活動的な生活を送るために十分な食物エネルギー量を継続的に入手することができないこと」である(国連食糧農業機関(FAO))。

   こうした食糧問題の背景には、富める国と貧しい国との著しい格差や構造的な問題もあるが、昨今の気候変動による極貧国での不作や不漁、また肉食が増えることによって、食糧として供給されるべき穀物が食肉用の家畜へのエサとなったりするなどもある。課題が多岐に渡っているために抜本的な対策を立てることは容易ではない。2030年の目標達成に向け、いまこそ国際間の協力、パートナーシップはかかせないものとなっている。

   私たち一人ひとりにもできることはある。フードロスを出来る限り減らすことだ。

   スーパーで必要以上の食品を買ってしまい、食べずに廃棄したりするようがないこと、作りすぎて捨てたりしないようにすること、一回の食事は食べきれるだけ作り、食べきること。レストランでも食べきれない量を注文しないこと、などである。世界中の飢餓をなくすための行動には、そのような私たちの生活における心がけが大切なのである。

 

パンチョス萩原(Soiコラムライター)

 

参考・出典

農林水産省 知ってる?日本の食料事情~日本の食料自給率・食料自給力と食料安全保障~

https://www.maff.go.jp/kanto/kihon/kikaku/kihonkeikaku/pdf/zen27.pdf

国連食糧農業機関(FAO) 食料不安の評価 それぞれの数値と目的

http://www.fao.org/3/cb0165ja/cb0165ja.pdf

ハンガー・フリー・ワールド(HFW) 世界の食料問題HP