最近はすっかり秋らしい気候になり、秋冬物の上着を羽織るようになった。
今の季節、かなり冷え込む早朝5時頃であるが、空が晴れていれば「国際宇宙ステーション・きぼう」を肉眼で毎日見ることができる。宇宙航空研究開発機構のサイトによれば、比較的見やすいのは明日10月22日の午前5時18分から5時24分までの6分間、関東付近では南西の方角から見え始め、北東の方角で見えなくなる。主要な都市における目視可能な緯度と経度がサイトに載っているので、宇宙ファンならぜひとも早起きして時速約28,000km/h(秒速約8km/s)というライフル銃の弾丸スピードの3倍以上の速度で飛行する宇宙ステーションをその目でご覧になって頂きたい。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、この「国際宇宙ステーション・きぼう」をはじめ、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」、地球観測衛星「Aqua」、気象衛星「ひまわり」、超低高度衛星技術試験機「つばめ」、地球観測衛星「TRMM」など多くの人工衛星によって、宇宙から地球のさまざまな観測を実施している。災害被害、気候変動、熱帯雨林や森林の変化状況など、地上からの観測よりもはるかに効率的かつ大規模のデータを収集することにより、現状把握を通じて今後の対策をいち早く立ててアクションにつなげることを目指している。
例えば、JAXAは、80か国に及ぶ熱帯雨林の伐採状況とその変化をモニタリングしており、データはネット上に開示されて私たちはいつでも見ることができる。SDGsの環境課題、特に森の保護への課題解決につなげたい人々に大いに役に立っている(「ICA-JAXA熱帯林早期警戒システム」https://www.eorc.jaxa.jp/jjfast/jj_mapmonitor_phase1.html)。サブ・サハラ、南米や東南アジアにおける貴重な熱帯雨林がどんどん失われている様子がマップ上ではっきりと見える。これは陸域観測技術衛星2号「だいち2号」を使用した取り組みである。
海洋環境の監視では、宇宙から降雨量を観測し、リアルタイムで世界の降水情報を提供している(世界の雨分布速報https://sharaku.eorc.jaxa.jp/GSMaP/index_j.htm)。衛星データと地上データを統合することで、下流地域の洪水が起きる可能性があるかを数日前から予測できるため、特にアジア地域の国際河川などの越境地域の水位の共有が難しい地域の水害予測に役に立ち、洪水の被害を最小限に抑えるができる。
JAXAは大気汚染物質の監視の衛生を利用して行なっている。地上よりも宇宙から観測した方が、煙霧やPM2.5の流れをより詳細に観測することができるため、大気汚染が発生している地点を特定して、今後どのような汚染が広がるかを予測し、データを発信する。大気汚染による健康被害を未然に防止する取り組みである。
このほかJAXAは、宇宙のいわゆる無重力状態(実際には微小重力環境)を利用し、高品質なタンパク質結晶を宇宙空間で生成、その構造を精密に観察することで、感染症・がん・生活習慣病に効く新しい医薬品の早期開発や創薬にかかる期間を劇的に早める研究や、海洋上で発生している赤潮や油の流出などの海上災害の観測をしている。
さらには宇宙開発予算を取ることのできない開発途上国や衛星の開発技術がない新興国に対して、比較的コストが少ない超小型衛星の開発支援を行なったり、出来上がった超小型衛星を「国際宇宙ステーション・きぼう」の日本実験棟から宇宙空間へ放出することで、宇宙空間での利用や実証機会を提供し、それらの途上国における宇宙関連技術の向上と宇宙利用能力の構築に貢献しているのである。
SDGsの関心が高まっている近年は、地球規模のさまざまな課題について国々が手を取り合って解決を目指すケースが増えてきた。地球上でも多くの国々が自分の国の枠を超えたパートナーシップを組み、情報共有や共同研究を行なっている。宇宙空間でもまたしかりである。JAXAがさまざまな形でSDGsに取り組んでいる実例を知り、その行動に対して多大に貢献している「国際宇宙ステーション・きぼう」をその目でご覧になられた時に、改めて地球は宇宙からの監視によっても守られていることを実感されるにちがいない。
さて、明日は早起きをして南西の空を見上げるとしよう。
パンチョス萩原(Soiコラムライター)
参考・出典
宇宙航空研究開発機構(JAXA)SDGsへの貢献
https://www.jaxa.jp/about/iso/sdgs/index_j.html
人工衛星・探査機一覧
https://www.jaxa.jp/projects/past_project/sat_j.html
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