残り10年のカウントダウン 【SDGs 持続可能な社会への取組】

   今年2020年は、国連総会でSDGs(持続可能な開発目標)が2015年9月に採択されてから、5年という節目の年である。SDGsの期限を迎える2030年までは残り10年となった。

   日本でも、首相が本部長、すべての国務大臣が構成員である「SDGs推進本部」が設置されており、予算も2兆円近くかけてさまざまな活動をしている。今年は「SDGs実施指針」が改訂された。また、この先10年間でするべき項目をまとめた「SDGsアクションプラン2020」も発表された。このアクションプランは、日本の「SDGsモデル」の3本柱である ①ビジネスとイノベーション,②地方創生,③次世代・女性のエンパワーメント に沿って,国内実施・国際協力の両面におけるSDGs達成に向けた具体的取組となっている(外務省HP)。

   世界に目を向けて見ると、各国もSDGsの活動に熱心に取り組んでいる。各国がどのくらい進捗しているか、成果を上げているかが評価されたものがある。「SDGs達成度ランキング」である。これは、「持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」と「ベルテルスマン財団」が、国連加盟国193か国すべてを対象として、世界銀行、WHO、ILO、および研究センターや非政府組織を含む他の組織によって公開されたデータをもとに作成している。

   2020年6月30日に発表された今年の達成度ランキングによると、上位3カ国は、スウェーデン・デンマーク・フィンランドの北欧の国が占めている。他の北欧諸国では、ノルウェーは6位、エストニアは10位、ラトビアは24位、アイスランドは26位、リトアニアは36位と、193か国のうち、上位を占めている。ヨーロッパ勢ではフランスが4位、ドイツが5位と高かった。日本は17位であった。

   国土が日本の約1.2倍で人口1000万人のスウェーデンは、日本ではIKEAやH&Mが有名であるが、ゴミのリサイクル率が99%であることはあまり知られていない。家庭から回収された年間200万トンにもなるゴミは、50%が廃棄場で燃やされ、熱をリサイクル(地域暖房の熱と発電に利用)、33%はリサイクルで再生原料に、16%が肥料やバイオガスの生産になり、埋め立てられるのは1%に満たない。再生エネルギーでは、ストックホルムやマルメといった主要都市街の市バスは100%バイオガスを燃料としている。生ごみはこのようにすべて再生エネルギーや肥料にされているので、食品ロスの問題もない。

   2012年からは、国内にある32カ所の廃棄物発電所(WTE:Waste-To-Energy)に「燃料」を供給するため、イギリス、イタリア、ノルウェー、アイルランドから年間80万トンほどのゴミを受け入れている。ゴミを輸出するそれらの国が処理料をスウェーデンに支払っているので、ゴミを輸入することで再生エネルギーを作り出し、国の財政も潤っているので一石二鳥だ。実際にはバイオガスの利用でCO2も大幅に削減されるなど、多くのメリットが多い。

   ゴミの収集も世界に先駆けて最先端を突き進んでいて、有名なのはハマービー・ショースタッドという町で行なわれている「循環型都市環境システム」、通称「ハマービーモデル」だ。この町では、マンションや道路に取り付けた円筒形のゴミ箱があり、住民はそこのゴミ箱に分別したゴミを投入する。ゴミ箱は地下にパイプでつながっており、ゴミはコンピュータ制御により、自動的にパイプを下って処理場へ運ばれリサイクルされるという仕組みだ(参照:City of Stockholm https://international.stockholm.se/

   スウェーデンは、ゴミの再利用のほか、太陽エネルギー利用も充実しており、多くの建物の屋根に設置されたパネルを通じて発電や給湯に活用している。また、カーシェアリング、市バス、フェリー、トラムなどの交通システム、歩道や自転車専用道も発達しており、居住者・通勤者の約8割が公共交通機関、徒歩、自転車を移動手段としている。これだけ町が持続可能な環境に整備されていれば世界ランキングでも1位になることは何の疑問もない。

   上述のSDGs達成度ランキングとは別に、国連は2020年7月7日、SDGsの17目標で掲げた数値目標の達成度や進捗状況を公表した(The Sustainable Development Goals Report 2020)。それによると、2015年以降、世界では目標1の「貧困をなくそう」、目標9の「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11の「住み続けられるまちづくりを」の3つの目標において、急速な進歩を遂げているそうだ。一方、目標2の「飢餓をゼロに」と、目標15の「陸の豊かさも守ろう」は、世界的に進展が見られておらず、むしろ状況が悪化している。グテーレス国連事務総長は、「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、目標の達成が一層困難になっている」という認識を示した。

   目標達成まで残された期間は10年。何をやるか、というのは、10年後にどんな世界に住んでいたいか、というビジョンから逆算してくればおのずと計画はできる。計画ができたら、あとは、有言実行するのみである。

 

参照サイト:

国際連合広報センター SDGs報告2020 https://unstats.un.org/sdgs/report/2020/

ハマービーショースタット https://www.urnet.go.jp/overseas/AseanSmartCityNetwork/lrmhph0000015tvv-att/14hamabi.pdf

 

持続可能な開発レポート2020 https://sdgindex.org/reports/sustainable-development-report-2020/

 

 

パンチョス萩原 (Soiコラムライター)